D&I担当者のための知恵袋

経営層を動かすD&I推進の提案:担当者が押さえるべきポイント

Tags: D&I推進, 経営戦略, リーダーシップ, 組織開発, 提案方法

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進は、現代の企業経営において不可欠な要素となりつつあります。しかし、担当者の皆様の中には、「経営層になかなか重要性が伝わらない」「どのように提案すれば承認が得られるのか分からない」といった壁に直面されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

D&I推進を組織全体で力強く進めるためには、経営層の深い理解と積極的なコミットメントが不可欠です。経営層の支援なくしては、予算や人員の確保、全社的な文化醸成は困難になります。本記事では、D&I推進担当者が経営層に対して効果的に提案し、その理解と支援を獲得するための具体的なアプローチとポイントを解説します。

D&I推進で経営層の理解が重要な理由

なぜD&I推進に経営層の理解と支援が不可欠なのでしょうか。主な理由は以下の通りです。

逆に、経営層の理解や支援がない場合、D&I推進は特定の部署や担当者だけの活動となり、全社への浸透が進まなかったり、取り組みが単発で終わってしまったりするリスクが高まります。

経営層への提案時に陥りやすい課題

担当者が経営層へD&I推進を提案する際に、どのような課題に直面しやすいかを見てみましょう。

経営層の理解と支援を獲得するためのアプローチ

これらの課題を踏まえ、経営層に効果的に提案するための具体的なアプローチをいくつかご紹介します。

1. D&Iとビジネス成果を結びつける

D&I推進は、単なる社会貢献活動ではなく、企業の競争力強化に直結する戦略投資であることを明確に伝えましょう。具体的には、以下のような観点からビジネスメリットを説明します。

可能であれば、「D&Iスコアが〇%向上すると、離職率が〇%低下し、採用コストを〇円削減できる可能性がある」のように、具体的な数値目標や削減効果を試算して示すと説得力が増します。

2. 客観的なデータと他社事例を活用する

自社の従業員構成データ、エンゲージメントサーベイの結果、採用・昇進における属性ごとの状況など、客観的なデータは現状課題とD&I推進の必要性を示す強力な根拠となります。また、競合他社や先進的な企業のD&I推進事例、それによって得られた成果を紹介することも有効です。業界のトレンドとしてD&Iが不可欠になっている現状を伝えることも、経営層の危機意識を醸成することにつながります。

3. 経営層の関心事に合わせたメッセージを作成する

経営層一人ひとりのバックグラウンドや関心事は異なります。自身の提案が、各経営層にとってどのようなメリットをもたらすのか(例: CFOなら財務的メリット、CMOならブランディングメリット、CHROなら人材戦略メリットなど)を事前に考え、メッセージを調整することが重要です。経営計画や目標にD&Iをどう位置づけるか、具体的な貢献方法を示すことも効果的です。

4. スモールスタートや段階的なアプローチを提案する

大規模な改革を一気に提案するよりも、「まずは〇〇部門でパイロットプログラムを実施する」「最初の3ヶ月で△△に取り組み、効果を検証する」といったスモールスタートや段階的なアプローチを提案することで、経営層の心理的なハードルを下げることができます。成功事例を積み重ねていくことで、徐々に全社展開への理解と支援を得やすくなります。

5. 推進体制と責任者を明確にする

誰が責任を持ち、どのような体制でD&I推進を進めるのかを明確に示すことも信頼を得る上で重要です。経営層に推進体制の一員として参画してもらうこと(例: D&I委員会の設置と役員の参加など)を提案できれば、さらに強力なコミットメントを引き出せる可能性があります。

実践上のポイント

提案の成功確率を高めるために、以下の点も意識しましょう。

まとめ

D&I推進を組織の核として定着させるためには、経営層の理解と支援が不可欠です。そのためには、単に「D&Iは大事だ」と訴えるだけでなく、ビジネス的な必然性、客観的なデータ、具体的な計画を示し、経営層の関心事に合わせた戦略的な提案を行うことが重要です。

経営層の理解を得る道のりは容易ではないかもしれませんが、今回ご紹介したアプローチを参考に、自社の状況に合わせて戦略を立ててみてください。経営層を巻き込み、D&Iを全社的な取り組みとして加速させていくことで、組織の持続的な成長と従業員一人ひとりが輝ける環境の実現に近づけるはずです。担当者の皆様の粘り強く、戦略的な挑戦を応援しています。