D&I担当者のための知恵袋

リソースが限られていてもできるD&I推進:担当者1人でも実践可能なステップ

Tags: D&I推進, リソース, 実践, 兼務, 担当者向け, 中小企業

はじめに:リソースの壁を乗り越えるD&I推進

「D&I推進は重要だと分かっているけれど、専任の担当者もいないし、予算も限られている…」。そう感じているD&I推進担当者の方、あるいは兼務で推進を任されている方は少なくないのではないでしょうか。特に、組織の規模が大きくない場合や、D&Iへの理解がまだ全社的に浸透していない段階では、大規模な施策を企画・実行するのは難しいと感じるかもしれません。

しかし、D&I推進は、必ずしも多大なリソースや専門知識がなければ進められないものではありません。小さな一歩からでも、着実に組織文化を変革し、多様な従業員が活躍できる環境を整備することは可能です。

この記事では、リソースが限られた状況でもD&I推進を効果的に進めるための実践的なステップと、担当者一人からでも始められるアプローチをご紹介します。

リソースが限られる組織におけるD&I推進の主な課題

リソースが限られている組織でD&I推進に取り組む際に直面しやすい課題は多岐にわたります。

これらの課題は、推進担当者のモチベーションを低下させたり、「どうせ何もできない」という諦めにつながったりする可能性があります。しかし、重要なのは「ないもの」を嘆くのではなく、「あるもの」を最大限に活用し、小さな成功を積み重ねていくことです。

リソースが限られていても実践できるD&I推進のステップ

ここでは、少ないリソースでも効果的に取り組める、具体的なステップをご紹介します。

ステップ1:現状把握と小さな目標設定

大規模な組織診断は難しくても、まずは身近な範囲から現状を把握し、達成可能な小さな目標を設定します。

ステップ2:手軽な情報発信と啓発活動

予算をかけずに行える情報発信や啓発活動は、従業員の意識に変化をもたらす第一歩です。

ステップ3:協力者の発掘と小さなチーム作り

一人で抱え込まず、社内の賛同者を見つけて協力体制を築きます。

ステップ4:効果測定とフィードバックの循環

小さな取り組みでも、その効果を測定し、フィードバックを得て次に活かすことが重要です。

事例:ある中小企業での取り組み

ある社員数100名規模の中小企業では、人事担当者が兼務でD&I推進を担当していました。予算もほとんどなく、専門知識も限られていました。

この担当者は、まず社内チャットツールに「ダイバーシティ&インクルージョン情報交換ルーム」を開設。週に一度、D&Iに関する簡単な記事やニュースを投稿することから始めました。興味を持った数名の社員がルームに参加し、コメントを寄せるようになりました。

次に、その中から特にD&Iに関心がある社員数名に声をかけ、非公式なランチミーティングを月に一度開催。ここでは、特定のテーマ(例:女性のキャリア、外国籍社員とのコミュニケーション)について自由に意見交換を行いました。

これらの活動を通じて集まった社員の声や、ランチミーティングで出たアイデアを、人事担当者は月次の役員会議で簡単に報告しました。最初は「難しい話だね」という反応でしたが、具体的な社員の声や、ランチミーティングが少人数の気軽な集まりであることが伝わると、徐々に経営層の関心も高まりました。

この小さな積み重ねが、その後、育児休業取得者への復職支援面談の導入や、社内報での「多様な働き方」特集へとつながっていきました。最初から大きな目標を立てず、身近なツールと協力者から始めたことが成功の鍵でした。

実践上のポイント:継続のために

まとめ:一歩踏み出す勇気

リソースの制約は、D&I推進を始めない理由にはなりません。むしろ、限られたリソースの中で創意工夫を凝らすことが、組織の実情に即した、地に足の着いた推進活動につながる場合もあります。

この記事でご紹介したステップは、担当者一人からでも始められる、小さくとも確実な一歩です。完璧な準備が整うのを待つのではなく、まずはできることから行動に移してみてください。あなたのその一歩が、組織の未来にとって大きな変化をもたらす可能性を秘めています。

活動を通じて見えてくる新たな課題や、協力してくれる仲間の存在が、きっと次のステップへの力になるはずです。応援しています。